CDリリース、ライブパフォーマンス、個展、映画への楽曲提供など、多角的な実践を展開して来た蓮沼執太がアサヒ・アートスクエアを拠点に展開する新プロジェクト「蓮沼執太のスタディーズ」。
本プロジェクトでは、毎月、レコーディング[録音]+シューティング[撮影]を行っていきます。2013年2月に予定している、アサヒ・アートスクエアでの展覧会に向け、様々なアイデアをかたちにしながら、サイトスペシフィックな作品制作に取り組みます。
第3回のテーマは「アサヒ・アートスクエア」。場[サイト]の特性を意識して作品制作に取り組んでいる蓮沼が、会場についてスタディします。アサヒ・アートスクエアと関わりの深い方を招き、録音、撮影を行います。会場は公開しています。
ご来場の際は以下ご了承ください。
*発表の場ではなく、試行錯誤を続ける作品制作の場となります。当初の予定と異なる内容になる場合もあります。
*打ち合わせ、リサーチ、仕込み、制作、撤収作業など、作品制作のための様々な作業を行っています。 *蓮沼が不在の時間帯もございます。
■開催概要
蓮沼執太 3:STUDIES(for Asahi Art Square) 日時:2012年4月18日(水)13:00 - 20:00 会場:アサヒ・アートスクエア [東京都墨田区吾妻橋1-23-1 スーパードライホール 4F アクセス] 料金:500円 主催:アサヒ・アートスクエア 協賛:アサヒビール株式会社
■タイムテーブル[時間は予定]
1300 開場 岩渕貞太[ダンサー・振付家] *参加予定
1500 泉太郎[美術作家]
1530 臼井隆志[アーティスト・イン・児童館]
1700 入江拓也[SETENV]
1830 北川貴好[美術作家]
1900 根本ささ奈[アサヒビール株式会社]
2000 閉場
2200 完全撤収
■今月のステイトメント
「非線形的なアイデアを許すような関係」
ア: ア、イ、ウ、エ、オ。以上、これらのパラグラフにはすべて共通するアイデアが内包されている。
イ: 夜中。電話中。どこか遠くの相手と話しながら、ペンをもった右手は考えもしないような線を描き、ある形を作っていたりする。メモ帳に絵とも言えない落書きが描かれる。自分の思考は相手との会話へ向いているはずなのに、身体はなぜか全く意図しない動きをする。この現象がおもしろくて仕方がない。このメモ帳が人に書かれる行為をアフォードする、と単純に言ってもよいのだけど、僕はこの現象もひとつの即興なんじゃないかと思う。美術、音楽、建築、小説でも近代以降の諸分野に共通するべき他律的なコンテクストの上で成立するものとは少し異なる解義かもしれないが、個人的には即興という言葉の意味が持つ土壌を広げるような拡大解釈が可能だと思っている。
ウ: コンテクストの位置について。大きな恣意性が入った活動や作品には、それを受け入れるために(ほぼ同義でそれを隠蔽するために)作家性が招聘される。では、それはどこへ応じているのだろうか。たとえば、時間というものがある。そこには当然いま生きている現代というものも同じ感覚で存在しているはずである。さまざまな事柄が複雑に絡み合って立ち現れるはずのコンテクストから、現代という時代だけを取り出して、そこから特殊解ではなくより受け入れ幅の広い一般解を作りあげようという姿勢がある。その一般解の場所へ向かって、恣意性や作家性が応じていると僕は思っている。音楽でいう一聴して誰が作曲したのかがわかる、小説でいう一読して誰が書いた文章かがわかる、絵画でいう一目見て誰がその線を描いたのかわかる、建築でいう一目見て誰がそれを設計したのかわかる、このような特徴的なスタイルが専売特許のごとく作り出される、採用され続ける。
エ: 取材の時にインタビュアによく問われることがある。 インタビュア「他ジャンルの方とのコラボレーションを活発に行っていますよね。またそのご自身の音楽性も1枚のアルバムや1回のコンサートだけでは方向性は判断出来ませんよねー。ホント色々な手法をお持ちですね。」 蓮沼「ありがとうございます。あぁ、そうですねぇ、コラボレーション、、、んー、そうですねぇ、手法、、、うーん、、、、時間と場所も違えば、関わる人も常に変わってくるので、作品の結果がちがうのは当たり前と言えば、当たり前かもしれませんね。」 インタビュア「あー、、、???、、、なるほどー。蓮沼さんは共通するスタイルというものを持っていないような雰囲気がありますものねー。」 蓮沼「たとえば、同じレシピを使っているのに、東京で作ったものとパリで作ったもの。食材や調理道具などの環境が違うのだから、結果である食事の味も共通するものなんて無いですよね。その土地に育まれた文化や、、、、(略)」 インタビュア「あー、料理、環境ですよね。素敵ですね。普段は料理されたりするんですかぁ?」 という感じで、とにかく僕はわかりにくい方法で表現をしているんだな、とつくづく感じる一面である。こういうシーンが本当に少なく無い。(インタビュアは全く悪く無い。表現を伝えきれていない自分に圧倒的に負がある。) さらに当然、歴史の再アレンジを反復とその継続によってより広く合理的な一般解への考えと表現があってからこそ、ジャンル横断することや共通スタイルを持つ作家像、という固定概念を植え付け、染み込んでいるんだと思う。これは受け手だけではなく、作家本人にもそういった既成概念が先ずあってからの意識が多くあると思っている。(もちろん制作方法とその結果への考えに対するネガティヴな指摘ではない。)それらをふまえてみても、僕自身は毎回同じようなスタイルや方法で表現が出来ないタイプである。どちらかと言えば、特殊解のまま一般解へ応えることで多くの誤解を生じさせてしまい、どうしようもなく解釈の幅が広くなってしまう。結果、表現に関して上記の問答のような雰囲気を持つことになる。それでも、いま対象を捉えにくい表現が僕の最大の関心事である。
オ: 他律的でもあり自律的でもあることについて。最初の段階から矛盾を孕んでいる表現への自他律をひとつの器に内包させること。この軋轢を取っ払い融解させるのは、コンテクストとの関係を一回無かったことにして、もっともっと別レヴェルの舞台を自分で作りあげてしまうことである。「あるコンテクストがここに在ったからこそ、この作品が出来上がった。」という答え方では無く「そもそもこの作品がこの環境に無くてはならなかった。」といったような強固なスタンスが例である。しかし、合理的な分業制作ではなく、より他領域に踏み込み合いアマチュアリズムをも許容出来るような、ある対象とコンテクストとの関係から離脱したような制作は他律的であり自律的でもありえるように思う。僕はこんなように常に矛盾を内包している道を探っていくことが、柔らかく形を持たない、もしくは様々に形を変えていけるような、具体かつアブストラクトな表現に繋がっていけると思っている。[2012 年3 月 蓮沼執太]
■蓮沼執太
http://www.shutahasunuma.com/
■Asahi Art Squar Grow up!! Artist Project 2012
すでに発表実績のあるアーティストが自らの表現ともう一度向き合い、多角的な視点からじっくりと「考える」機会を提供するプロジェクト。公募で選ばれたサポート・アーティストに、アサヒ・アートスクエアの会場の無償提供、資金サポートなどを行っている。2012年は蓮沼執太が、アサヒ・アートスクエアに定期的に通い、新プロジェクト「蓮沼執太のスタディーズ」に取り組んでいる。今後のスケジュール等の詳細はプロジェクトページをご覧下さい。
アサヒ・アートスクエア│Asahi Art Square
Tel. 090-9118-5171│E-mail aas@arts-npo.org
http://www.asahiartsquare.org/