公開報告会 Grow up!! Artist Project 2011 岩渕貞太
2011.12.21
サポートアーティストの岩渕貞太さんと選考にあたった運営委員が集まり、この一年間の活動を振り返る、公開報告会を開催しました。第1部では岩渕さんが記録画像や映像をみせながら、音楽家・大谷能生さんと共に取り組んだ作品「雑木林」のクリエーションと公演、音をテーマにしたワークショップなど、一年間の活動を報告しました。第2部では取り組みの成果や、アーティストサポートの在り方について、岩渕さん、「岩渕貞太 身体地図」の米原さんと細川さん、事務局、運営委員でディスカッションを行いました。
Grow up!! Artist Project 2011はこれで一区切りとなりますが、岩渕さんは次なる目標にむけて、ソロの新作に取り組んでいます。「雑木林」に続き、音楽家の大谷能生さんとの共同作業。タイトルは「living」。岩渕さんと大谷さんの新たな展開にご期待ください。
最後になりますが、岩渕さん、米原さん、細川さん、一年間お疲れさまでした。[坂田]
○ソロ・パフォーマンス w.大谷能生 『living』
詳細はこちら
http://teita-iwabuchi.com/jp/living.html
○報告会の配布物に載せた坂田のテキストを転載します。
岩渕貞太および「岩渕貞太 身体地図」のメンバーと共に過ごして来た1年間を振り返ってみて、以下2点記しておきたい。
1:まず私が注目したいのは、この一年間で岩渕の言葉が変化していったことだ。1月のインタビューでは、自身の今回の試みを「ダンスのための音楽でもなく音楽に合わせたダンスでもない作品」と表現していた。もちろん間違いではないのだろうが、かなり漠然とした説明が多かったように思う。しかし、大谷氏との稽古や公演「雑木林」に取り組む中で、音楽とダンスの理想的な関係が明確になってくると、岩渕はそれを「周囲の音を聴く」ことだと、表現するようになっていった。まず「聴く」。そして、そこで生まれてくる身体の表現があると。もちろん未だ抽象的な表現だが、以前と違うのは、それが自身の行為に関する言葉になったことだ。そのことで表現の方向性が明確になり、作品中でいかに「音を聴く(聴いている)身体」を作るかに稽古のポイントが絞られて行った。WSでも、表現を解説する視点が明確になったように思う。ただし、大谷氏の音楽観の強い影響を受けているのは事実で、今後の作品でそれがどう展開されるのか、注目したい。
2:2点目は「岩渕貞太 身体地図」の存在について。岩渕は2009年の作品「細胞の音楽」より、制作の米原晶子、技術サポートや撮影、デザインを担当する細川浩伸らと「岩渕貞太 身体地図」というゆるやかな枠組みをつくり動き始めた。この一年間も「身体地図」として動き、私はその在り方に非常に興味を魅かれた。これはカンパニーでもなく、制作会社でもない。専門性を持った個人がそのスキルを生かしながら、ゆるやか且つフラットにつながり、対等な立場で対話しながらプログラムの企画、作品作りを進めていく。ダンサーや制作、技術者が協働する新たな枠組みとして非常に興味深い。7月のワークショップでは、米原の映画の知識を生かし、「映像表現と身体」という切り口から、岩渕の身体観をワークショップを通して伝える場をつくった。これは一例だが、「身体地図」は輪郭が曖昧だからこそ、内部/外部のコラボレーターの知識/経験が上手い具合に流れ込む、非常に良く出来たシステム、「場」になっている。この場を拠点に、岩渕の活動が様々な方向に拡張していく予感を持つ。